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Japanese StockJanuary 2, 2026

富士通が刻む新たな高値の裏側:IT巨人の変革は本物か、それとも過熱か

Fujitsu Limited6702
Japanese Stock

Key Summary

富士通の株価が年初来高値を更新し、市場の注目を集めています。サービスソリューション事業の好調と構造改革による利益急増が背景にありますが、テクニカル指標や市場心理は強気と警戒が交錯する複雑な局面を示唆しています。本稿では、最新の業績データと市場の声を分析し、この上昇トレンドの持続性と投資家が今取るべきスタンスを紐解きます。

年末の株式市場において、静かでありながら力強い動きを見せた銘柄があります。日本のIT業界を長年牽引してきた富士通です。12月30日の取引で株価は4,329円に達し、前日比で2.27%の上昇を記録しました。これは単なる一日だけの変動ではなく、年初来高値の更新という象徴的な出来事であり、投資家たちに「この老舗ハイテク企業は完全に生まれ変わったのか」という問いを投げかけています。

まず、足元の株価動向をテクニカルな視点から冷静に分析してみましょう。投資家の過熱感を測る「RSI(相対力指数)」は現在、14日ベースで61.66を指しています。一般的にRSIが70を超えると「買われすぎ」、30を下回ると「売られすぎ」と判断されますが、現在の60台前半という数値は非常に興味深い水準です。これは、上昇トレンドが明確に形成されているものの、市場が熱狂して盲目的に買い進んでいるわけではないことを示唆しています。つまり、まだ「バブル的な過熱」には至っておらず、適度な買い需要に支えられた健全な上昇局面にあると言えるでしょう。弊社独自の分析スコアが「59」という中立からやや強気のゾーンにあることも、この見方を裏付けています。

では、なぜ今、富士通が買われているのでしょうか。その答えは、企業のファンダメンタルズ(基礎的条件)の劇的な変化にあります。10月末に発表された2026年3月期第2四半期の決算内容は、多くの市場関係者を驚かせました。営業利益は前年同期比で145.0%増の1,053億円、中間利益に至っては635.2%増という驚異的な伸びを見せました。

もちろん、この数字を額面通りに受け取るだけでは不十分です。利益急増の一因には、政策保有株式の売却益という一過性の要因が含まれているからです。しかし、ここで投資家が注目すべき本質的なポイントは、本業である「サービスソリューション事業」が着実に収益を伸ばしているという事実です。かつてのハードウェア偏重から脱却し、DX(デジタルトランスフォーメーション)支援やコンサルティングを中心とした高付加価値ビジネスへの転換が、数字として結実し始めているのです。これは、構造改革が単なるスローガンではなく、実体を伴って進行している証拠と言えます。

市場の評価に目を向けると、プロのアナリストと個人投資家の間に興味深い温度差があることに気づきます。アナリストの平均評価は5段階中「4.5」という非常に高い「強気」水準にあり、目標株価の平均値は4,414円と設定されています。現在の株価水準(4,329円)と比較すると、上値余地は8%強と決して大きくはありませんが、プロたちは依然として同社の成長ストーリーを信じているようです。一方で、個人投資家のセンチメントは「売り」が優勢となっており、掲示板などの感情分析でも「様子見」が67%を占めています。これは、急ピッチな株価上昇に対して個人投資家が警戒感を抱き、利益確定のタイミングを計っていることの表れでしょう。

バリュエーション(株価評価)の観点からはどうでしょうか。予想PER(株価収益率)は18.5倍、PBR(株価純資産倍率)は3.65倍となっています。日本の伝統的な電機メーカーとして見れば、これらの数値は「やや割高」に映るかもしれません。しかし、グローバルなITサービス企業として再評価するならば、このプレミアムは正当化される余地があります。特にPBRが1倍を大きく超えていることは、市場が富士通の保有する資産以上の価値、すなわち将来の成長力や無形資産を高く評価していることを意味します。

今後の展望として、投資家が意識すべきは「期待値のマネジメント」です。アナリストの目標株価である4,414円に接近しつつある現在、ここから一本調子での急騰を期待するのは楽観的すぎるかもしれません。短期的には、個人投資家の利益確定売りによる調整局面が訪れる可能性も十分にあります。特にRSIが今後70に近づく場面では、一時的な反落への警戒が必要です。

しかし、中長期的な視点に立てば、富士通の投資魅力は依然として色褪せていません。日本国内におけるDX需要は衰える気配がなく、人手不足を背景とした業務効率化への投資は企業の最優先課題であり続けます。そのソリューションを提供する富士通は、構造的な追い風を受けていると言えます。また、政策保有株の縮減を進めていることは、資本効率の向上を意味し、将来的には増配や自社株買いといった株主還元策の強化につながる可能性を秘めています。

結論として、現在の富士通株に対するアプローチは、短期的な値幅取りよりも、企業の体質改善という「大きな物語」に乗る姿勢が賢明かもしれません。現在の株価は、過去のハードウェアメーカーとしての評価から、高収益なサービス企業としての評価へと移行する過渡期にあると考えられます。もし市場全体の調整などで一時的に株価が下落する場面があれば、そこは長期的な成長果実を享受するためのエントリーポイントになる可能性があります。上昇トレンドの中にあるからこそ、高値掴みを警戒しつつ、押し目を冷静に待つ。そんな余裕を持った投資スタンスが、今の富士通には相応しいと言えるでしょう。

This report is an analysis prepared by InverseOne. The final responsibility for investment decisions lies with the investor. This report is for reference only and not an investment recommendation. Past performance does not guarantee future returns.