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日本株2026年2月18日

日産自動車の逆説的急騰:巨額赤字予想の中で輝くPBR0.33倍の正体

Nissan Motor Co., Ltd.7201
日本株

重要な要約

6,500億円の最終赤字予想という衝撃的な発表にもかかわらず、日産自動車の株価は上昇基調を強めています。RSIが買われすぎの水準に迫る中、市場は「Re:Nissan」による構造改革の進展とPBR0.33倍という極低評価を好感しています。アナリストの慎重な見方と投資家の熱狂が交錯する今、この老舗自動車メーカーの株価が示す真のメッセージを読み解きます。

株式市場には時として、一見すると不可解な動きを見せる瞬間があります。今、その最も顕著な例が日産自動車(7201)です。日本を代表するこの自動車メーカーは、2月12日に2026年3月期の業績予想を修正し、最終損益が6,500億円の赤字になる見通しを発表しました。通常であれば、これほどの巨額赤字は投資家を恐怖に陥れ、売り注文の殺到を招くはずです。しかし、市場の反応は真逆でした。発表後、株価は力強い上昇を見せ、一時460円台を回復するなど、まるで好決算を発表したかのような活況を呈しています。なぜ「悪いニュース」が「買い材料」へと転化したのか。そこには、表面的な数字だけでは見えてこない、投資家心理と構造改革への期待、そしてテクニカル指標が示唆する強烈なモメンタムが複雑に絡み合っています。

まず、現在の株価の熱量を測るためにテクニカル分析の視点を取り入れてみましょう。投資家の過熱感を示すRSI(相対力指数)は、現在「69.9」を記録しています。一般的にRSIが70を超えると「買われすぎ」と判断され、調整局面入りが警戒される水準ですが、69.9という数字はまさにその寸前、強気相場のど真ん中にいることを示しています。これは、投資家たちがリスクを承知の上で、現在の株価水準に強い魅力を感じている証拠です。さらに、AIによる分析スコアは「84」という高得点をマークしており、センチメントが急速に好転していることを裏付けています。最近の変動率が6.04%に達していることも見逃せません。この高いボラティリティは、市場参加者の入れ替わりが激しく、強気派と弱気派が激しく衝突しながらも、結果として買い圧力が勝っている状況を描写しています。

では、なぜ投資家はこのタイミングで日産を買うのでしょうか。その答えの一つは、同社が進める構造改革プログラム「Re:Nissan」の進捗にあります。今回の業績修正で注目すべきは、最終赤字の拡大ではなく、営業損失の見通しが600億円へと縮小された点です。これは、コスト削減策が当初の想定よりも迅速に進んでいることを意味しており、市場はこれを「膿を出し切るプロセスが順調である」と前向きに評価しました。過去の事例を見ても、ソニーや日立製作所など、巨額の構造改革費用を計上してV字回復を果たした企業は少なくありません。投資家は日産に、かつての復活劇の再来を重ね合わせているのです。

さらに、バリュエーションの観点から見ると、現在の日産株は歴史的な割安水準に放置されています。特に注目すべきはPBR(株価純資産倍率)です。2月17日時点で0.33倍という数値は、企業の解散価値である1倍を大きく下回るものであり、極端に言えば「企業の保有資産価値の3分の1の価格で株が売られている」状態です。東京証券取引所がPBR1倍割れの是正を強く求めている現在の市場環境において、この低PBRは強烈な是正圧力を生むと同時に、下値不安を和らげるクッションの役割を果たしています。欧州系大手証券がレーティングを中立に引き上げ、目標株価を400円に設定したことも、底打ち感の醸成に一役買っています。

しかし、手放しで楽観視できる状況ではありません。市場の熱狂とは裏腹に、冷静な分析も必要です。アナリスト15名による平均目標株価は336円程度にとどまっており、現在の株価水準(450円〜460円近辺)とは大きな乖離があります。Simply Wall Stの分析によるフェアバリューも364円とされており、ファンダメンタルズの観点からは「割高」というシグナルが点滅しています。この株価と実力値のギャップは、現在の株価上昇が将来の回復を先取りしすぎている可能性を示唆しています。また、電動化(EV)シフトの遅れや、中国市場での苦戦といった構造的な課題が解決したわけではありません。巨額のリストラ費用はキャッシュフローを圧迫し、財務的な流動性リスクも依然として燻っています。

投資家にとって現在の日産自動車は、非常にスリリングな投資対象と言えるでしょう。短期的には、RSIが示す強いモメンタムと低PBR是正の思惑が株価を支える展開が予想されます。特に「コスト削減」という明確なカタリストが機能している間は、悪材料出尽くしによるリバウンド狙いの資金が流入し続ける可能性があります。しかし、中長期的には、2028年に向けて掲げられた売上高や利益目標が絵に描いた餅に終わらないか、厳しい監視が必要です。

結論として、今の日産株への投資は「再生への賭け」という性格を強く帯びています。テクニカル指標は上昇トレンドの継続を示唆していますが、RSIが70を超える過熱圏にあるため、短期的な調整には十分な警戒が必要です。安易な追随買いは避け、押し目を丁寧に拾う戦略が賢明かもしれません。日産がこの構造改革という荒波を乗り越え、再び自動車業界の表舞台で輝きを取り戻せるのか。その答え合わせはまだ始まったばかりであり、投資家には「期待」と「現実」のバランスを見極める冷静な眼力が求められています。

本レポートはInverseOneが分析した資料です。投資判断の最終責任は投資家本人にあります。本レポートは投資アドバイスではなく、参考資料としてのみご利用ください。過去の実績は将来の収益を保証するものではありません。