株式市場において、長い沈黙を破り「構造的な変化」を数字で証明した企業ほど、投資家に強烈なインパクトを与えるものはありません。2026年2月初旬、韓国株式市場においてネクセンタイヤ(002350)が見せた動きは、まさにその典型例と言えるでしょう。同社の株価は2月5日、一時12%超という急騰を見せ、52週高値を更新する8,920ウォンを記録しました。この株価上昇の背景には、単なる一時的な好材料ではなく、企業のファンダメンタルズ(基礎的条件)が新たなステージに突入したことを示す確固たる証拠が存在します。今回は、売上高3兆ウォンという歴史的なマイルストーンを突破したネクセンタイヤについて、その財務内容、テクニカル指標、そして将来の展望を深く掘り下げていきます。
まず、市場を驚かせたのは2025年の通期決算内容です。ネクセンタイヤは創業以来初めて、年間売上高3兆ウォンの壁を突破し、3兆1,900億ウォン(前年比12%増)という過去最高記録を打ち立てました。製造業において、売上の桁が変わるというのは、生産能力と販売網が次のレベルへ拡大したことを意味します。特に注目すべきは、第4四半期(10-12月期)のパフォーマンスです。この期間の売上高は8,330億ウォンに達し、営業利益に至っては前年同期比161.7%増の404億ウォンという驚異的な伸びを記録しました。通期の営業利益こそ前年比でわずかに減少(-1.1%)したものの、年末にかけて利益創出力が劇的に回復・加速している点は、2026年に向けた非常に明るいシグナルと捉えることができます。
この成長を牽引しているのは、間違いなく欧州市場での成功です。2025年の地域別売上構成を見ると、欧州(EU)が全体の41%を占め、1兆3,100億ウォンを売り上げています。これは北米の22%、韓国国内の19%を大きく引き離す数字です。チェコ工場の増設効果により供給が安定し、現地での販売チャネルが強化されたことが奏功しました。多くの韓国企業が内需の停滞に苦しむ中、グローバル市場、特に品質要求の厳しい欧州でこれだけのシェアを獲得している事実は、同社の製品競争力がプレミアムブランドに匹敵するレベルに達していることを示唆しています。
さて、投資家として気になるのは、現在の株価水準が「買い」なのか、それとも「過熱」なのかという点でしょう。ここでテクニカル分析の視点を取り入れてみます。現在、ネクセンタイヤのRSI(相対力指数)は14日ベースで66.94を示しています。RSIは通常、70を超えると「買われすぎ」と判断されますが、現在の数値は「過熱直前の非常に強い上昇モメンタム」にあることを示しています。分析スコアが78という高水準にあることからも、市場のセンチメントが強気に傾いていることが分かります。最近の変動率が9.7%という急激な上昇を見せているため、短期的には利益確定売りによる調整が入る可能性は否定できません。しかし、トレンド自体は強力な上昇気流に乗っており、押し目は新たなエントリーの機会となる可能性があります。
さらに、ファンダメンタルズの観点から見ると、現在の株価は依然として「割安」であると言わざるを得ません。証券業界のアナリストたちが注目しているのは、そのバリュエーションの低さです。株価収益率(PER)は約5倍、株価純資産倍率(PBR)は0.3倍という水準で取引されています。一般的に、成長軌道に乗っている企業のPERが5倍程度に放置されることは稀です。これは市場がまだ同社の成長持続性に懐疑的であるか、あるいは単に見過ごされてきたかのどちらかですが、今回の好決算によって「見直し買い(リレーティング)」が本格化する公算が高いでしょう。ハナ証券などの主要証券会社が目標株価を10,500ウォンに引き上げ、投資判断を「BUY」で維持しているのも、この極端な割安感を解消する過程で株価が上昇余地を持っていると判断しているからです。
もちろん、リスク要因がないわけではありません。タイヤ業界は原材料価格の変動や為替レートの影響を強く受けます。また、米国市場における関税関連の不確実性は依然として懸念材料として残っています。しかし、ネクセンタイヤの場合、売上の4割以上を欧州で稼ぎ出すポートフォリオを構築しているため、対米リスクをある程度分散できている点は強みです。また、最近の投資家動向を見ると、外国人投資家が週間で約14万株を買い越している一方で、国内機関投資家は売り越しています。これは、グローバルな視点を持つ投資家が同社の割安評価に気づき始めている一方で、国内勢は短期的な利益確定に動いているという構図を示しており、需給バランスの変化には注意が必要です。
2026年の展望として、会社側は売上高3兆5,000億ウォン(前年比9.7%増)という野心的な目標を掲げています。LS証券などの予測によれば、2026年の営業利益は2,150億ウォン(前年比26.2%増)に達すると見込まれています。チェコ工場の稼働率向上による「規模の経済」効果と、高付加価値タイヤへの製品ミックス改善が進めば、利益率はさらに改善するでしょう。特に、新車用(OE)タイヤと交換用(RE)タイヤの連携強化は、長期的な顧客ロイヤルティを高めるための重要な戦略となります。
結論として、ネクセンタイヤは今、単なる「低位株」から「グローバル成長株」へと脱皮する重要な転換点にあります。テクニカル指標が示す短期的な過熱感には警戒が必要ですが、PER5倍というバリュエーションは、中長期的な視点で見ればダウンサイドリスク(下落余地)を限定的にし、アップサイド(上昇余地)の魅力を高めています。「売上3兆ウォン」という実績は、同社が次のステージへ進んだことの号砲であり、投資家にとっては、市場がその真価を完全に織り込む前の、数少ない参入機会であるかもしれません。タイヤが路面をしっかりとグリップするように、この銘柄がポートフォリオの安定と成長を支える存在になる可能性は十分に高いと言えるでしょう。