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米国株2026年2月8日

カミンズ (CMI):データセンター需要の追い風と水素事業の「産みの苦しみ」の狭間で揺れる巨象

CumminsCMI
米国株

重要な要約

米エンジン大手カミンズは、好調な決算にもかかわらず水素事業の巨額損失計上で株価が急落するという波乱の展開を見せています。データセンター向け電力システムの強力な需要という「光」と、脱炭素への移行コストという「影」が交錯する中、投資家はいま何を判断材料にすべきか。テクニカル指標とファンダメンタルズの両面から、老舗企業の現在地を徹底分析します。

米国を代表するインダストリアル・ジャイアント、カミンズ(CMI)がいま、非常に興味深い転換点に立っています。100年以上の歴史を持つこのエンジンメーカーは、伝統的なディーゼルエンジンの力強さと、次世代のクリーンエネルギーへの移行という二つの重い荷物を背負いながら、市場の荒波を進んでいます。最近の市場の反応は、まさにその「過渡期の痛み」を如実に表していると言えるでしょう。投資家の皆様もご存知の通り、同社が発表した2025年第4四半期の決算は、表面上の数字と市場の反応が大きく乖離する結果となりました。1株当たり利益(EPS)は5.81ドルと、市場予想の5.20ドルを大きく上回る好成績を叩き出しました。しかし、株価は一時約11%も急落するというショッキングな動きを見せました。なぜ、これほどの好決算が売りを浴びたのか。そこには、同社が抱える構造的な課題と、未来への投資に伴う「産みの苦しみ」が隠されています。

まず、テクニカルな側面から現在の株価位置を確認しておきましょう。投資家の心理状態を数値化したRSI(相対力指数)は、14日ベースで54.31を示しています。一般的にRSIは70を超えれば「買われすぎ」、30を下回れば「売られすぎ」と判断されますが、現在の54という数値は、まさに「中立」の領域にあります。これは、急落後の自律反発が一巡し、市場が次の方向性を慎重に見極めようとしている状態を示唆しています。一方で、最近の変動率が6.86%と高まっている点には注意が必要です。大型の優良株にしてはボラティリティが高く、市場参加者の意見が強気と弱気で激しく対立していることを物語っています。分析スコアが40というやや低めの水準にあることも、テクニカル面ではまだ本格的な上昇トレンドへの回帰が確信できていないことを示しており、安易な押し目買いには慎重さが求められる局面と言えるでしょう。

さて、ファンダメンタルズの視点に戻り、今回の急落の主因となった「Accelera(アクセレラ)」セグメントについて深く掘り下げてみましょう。Acceleraはカミンズの水素・燃料電池事業を担う未来の成長エンジンですが、今回、電解槽および構造改革費用として約4億5,800万ドルもの特別損失を計上しました。投資家にとって、将来の成長ストーリーであるはずの部門が、現時点では巨額のキャッシュを燃焼させる「お荷物」に見えてしまったことが、嫌気された最大の要因です。脱炭素社会への移行は不可避ですが、そのコストとタイムラインが想定以上に厳しい現実を突きつけられた形です。さらに経営陣が、この課題への対処と成長投資を優先するために自社株買いを一時停止すると発表したことも、株主還元を重視する投資家にとってはネガティブなサプライズとなりました。

しかし、悲観すべき材料ばかりではありません。むしろ、カミンズの「本業」の強さは依然として健在であり、新たな成長ドライバーも明確に見えています。特筆すべきは、データセンター向けの電力システム需要の爆発的な伸びです。AI(人工知能)の普及に伴い、データセンターの電力消費量は急増しており、安定したバックアップ電源としての発電機需要はかつてない高まりを見せています。これはカミンズにとって、景気循環の影響を受けやすいトラック市場の変動を相殺する強力な安定収益源となりつつあります。実際、2026年の見通しとして売上成長率3~8%、EBITDA利益率17~18%という堅実な数字を掲げていることは、経営陣の自信の表れと見て取れます。

バリュエーションの観点からは、現在の株価水準は魅力的に映ります。DCF(割引キャッシュフロー)分析などの理論株価モデルでは、現在の株価は推定される本源的価値に対して13%ほど割安であると示唆されています。PER(株価収益率)は約31倍と一見高く見えますが、これは一時的な損失計上による利益の圧迫が影響しており、将来のキャッシュフロー創出能力を考えれば、過度な割高感はありません。アナリストの平均目標株価が522ドル近辺であり、中には600ドル以上を提示する強気な見方もあることは、長期的には市場が同社の回復力を信じている証拠でしょう。

今後の展望として重要なのは、2026年下半期に見込まれる北米オンハイウェイトラック市場の回復です。現在は緩やかな回復基調にありますが、これが本格化すれば、本業であるエンジン部門の収益性がさらに向上し、Accelera部門の赤字を十分にカバーできる体力がつくはずです。また、13億5,000万ドルから14億5,000万ドル規模の資本支出を計画しており、特に高馬力エンジンとパワーシステムへの投資を加速させている点は、データセンター需要を確実に取り込むという強い意志を感じさせます。

結論として、現在のカミンズは「伝統的なディーゼルエンジンの収益力」と「次世代エネルギーへの投資負担」の綱引き状態にあります。短期的にはAccelera部門の不確実性と自社株買い停止が株価の上値を抑える可能性がありますが、データセンター需要という構造的な追い風は長期かつ強力です。RSIが示す中立的な水準は、冷静にエントリータイミングを図る良い機会かもしれません。投資家としては、次の四半期でAccceleraの損失が縮小に向かうか、そしてデータセンター向け売上が期待通りに成長を続けるかを確認しつつ、この老舗企業が「脱皮」する過程をじっくりと見守る価値は十分にあると言えるでしょう。急落はリスクであると同時に、優良資産を適正価格以下で手に入れる好機でもあります。

本レポートはInverseOneが分析した資料です。投資判断の最終責任は投資家本人にあります。本レポートは投資アドバイスではなく、参考資料としてのみご利用ください。過去の実績は将来の収益を保証するものではありません。

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