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日本株2026年2月12日

AI半導体の「切る・削る・磨く」の王者、ディスコが見せた復活の狼煙と最高値への道

DISCO Corporation6146
日本株

重要な要約

第3四半期決算での営業増益と自社株買い発表を機に、ディスコの株価が急騰しています。AI半導体向け装置の需要堅調さが確認されたことで、市場の懸念は払拭されつつあります。テクニカル指標も強いモメンタムを示唆する中、アナリストの評価が分かれる現状をどう読み解くか、投資家が直面する機会とリスクを詳細に分析します。

半導体製造装置業界において、これほどまでに市場の注目と期待、そして時には不安を一心に背負う銘柄は稀有な存在と言えるでしょう。「切る・削る・磨く」という極めてニッチでありながら、半導体製造に不可欠な精密加工技術で世界をリードするディスコ(6146)が、再び投資家の熱視線を浴びています。2月10日に発表された2026年3月期第3四半期決算は、これまで市場の一部に漂っていた不透明感を一掃する内容となり、翌日の株式市場ではストップ高を記録するという劇的な展開を見せました。今回は、この急動意の背景にあるファンダメンタルズの変化と、テクニカル面から見た現在の立ち位置、そして今後の投資戦略について深掘りしていきます。

まず、今回の株価急騰の直接的なトリガーとなった決算内容について整理しましょう。発表された第3四半期(2025年4~12月)の連結営業利益は前年同期比9.7%増の1262億円となり、通期の営業利益見通しも前期比3.2%増の1721億円とされました。数字だけを見れば堅調な成長といった印象ですが、重要なのは「コンテキスト(文脈)」です。昨年12月に発表された上期決算時には、売上の期ズレなどが影響し、市場の期待値に届かず株価が急落する局面がありました。投資家心理としては「AI特需は本物か?」「需要のピークアウトではないか?」という疑念がくすぶっていたのです。しかし、今回の決算発表はそうした懸念を払拭するに十分なものでした。特に、生成AI向けの高性能半導体に不可欠なHBM(広帯域メモリ)や高度なパッケージング工程において、同社の精密切断・研削装置(ダイサ、グラインダ)が高い稼働率と出荷額を維持していることが確認された意義は大きいと言えます。

さらに、投資家にとってポジティブサプライズとなったのが、発行済み株式数の2.05%に当たる125万株、金額にして50億円を上限とする自社株買いの発表です。成長企業でありながら株主還元にも積極的な姿勢を示すことは、資本効率を重視する海外投資家への強力なメッセージとなります。取得期間が4月末までと比較的短期間に設定されていることも、需給面での短期的な下支え要因として機能するでしょう。

テクニカル分析の視点からも、現在のディスコの強さは際立っています。AIによる分析スコアは「88」という極めて高い数値を記録しており、これは市場全体の中で同社がトップクラスの投資妙味を持っていることを示唆しています。特に注目すべきは、RSI(相対力指数)が14日ベースで68.91という水準にある点です。一般的にRSIが70を超えると「買われすぎ」と判断されますが、68.91という数値は、過熱感が出る直前の、最も上昇モメンタムが強い「ゾーン」に位置していると解釈できます。最近の株価変動率が4.35%とボラティリティが高まっている中で、トレンドが明確に上方向へ向いていることは、順張り投資家にとって好機と映るはずです。ただし、70を超えてくると短期的な調整が入る可能性も高まるため、エントリーのタイミングには慎重さが求められます。

市場環境全体を見渡すと、日本の衆議院選挙以降、ディスコの株価は12.6%上昇しました。これは米国市場におけるハイテク株の反発と連動しており、特にエヌビディアをはじめとするAI関連銘柄への資金流入が継続していることが追い風となっています。半導体の微細化が物理的な限界に近づく中、チップを積み重ねて性能を向上させる「アドバンスド・パッケージング」技術の重要性が増しており、その工程でウェーハを極限まで薄く削り、正確に切断するディスコの技術は、もはや代替不可能なインフラとなっています。これが、同社が高い利益率(マージン)を維持できる構造的な理由であり、中長期的な強気シナリオの根幹を成しています。

一方で、投資家が冷静に考慮すべきリスク要因も存在します。アナリストによる目標株価の乖離が激しいことは、その象徴です。強気派の日系中堅証券が目標株価を79,000円に引き上げる一方で、慎重な見方をするアナリストもおり、適正株価の予想レンジは約2万円から6万円台と極めて広範囲に分散しています。この乖離は、現在のAIブームを「長期的なスーパーサイクルの入り口」と見るか、過去のシリコンサイクルのような「一時的な特需」と見るかの違いに起因しています。もし世界的な景気後退やAI投資の冷え込みが起きれば、顧客である半導体メーカーは設備投資(CapEx)を凍結し、ディスコの受注残高にも即座に影響が及ぶでしょう。また、現在の株価はすでに高い成長期待を織り込んでおり、わずかなガイダンスの未達でも失望売りにつながる脆さを孕んでいます。

結論として、ディスコは現在、テクニカルとファンダメンタルの両面で非常に強力な上昇気流に乗っています。RSIが示す強いモメンタムと、決算で証明された底堅い需要は、短中期的には株価を押し上げる要因となるでしょう。しかし、投資判断においては「AI半導体相場の波」にうまく乗る一方で、常に「降りる準備」も意識しておく必要があります。特にRSIが70を超えた局面での高値掴みは避け、押し目を丁寧に拾っていく戦略が有効かもしれません。業界内での圧倒的なシェアと技術力を持つ同社は、ポートフォリオの成長エンジンとして魅力的ですが、そのボラティリティを許容できるかどうかが、投資家にとっての試金石となるでしょう。

本レポートはInverseOneが分析した資料です。投資判断の最終責任は投資家本人にあります。本レポートは投資アドバイスではなく、参考資料としてのみご利用ください。過去の実績は将来の収益を保証するものではありません。