世界経済の血流とも言える「電力」インフラが、今、かつてないほどの注目を集めています。再生可能エネルギーへの転換、AIデータセンターの急増、そして老朽化した送電網の更新需要が重なり、電力機器業界は「スーパーサイクル」と呼ばれる長期的な好況期に突入しています。その中心で、韓国の重電メーカーであるイルジン電気(Iljin Electric)が存在感を強めています。最近の株価変動率が6.6%の上昇を見せたことは、市場が同社の成長ストーリーを再評価し始めた証左と言えるでしょう。
まず、投資家の皆様が気になる株価の動きを、テクニカルな側面から紐解いてみましょう。現在、イルジン電気のRSI(相対力指数)は14日ベースで62.87を記録しています。RSIは70を超えると「買われすぎ」、30を下回ると「売られすぎ」と判断されますが、現在の60台前半という数値は、上昇トレンドが継続しているものの、まだ過熱感には至っていない「絶好の買い場」を示唆する可能性があります。さらに、独自の分析スコアが80という高水準にあることは、財務の健全性とモメンタムの強さが両立していることを意味しており、短期的な投機対象としてではなく、中長期的な投資対象として検討に値する銘柄であることを示しています。
ファンダメンタルズの観点からも、イルジン電気の強さは際立っています。2026年2月4日時点で確認された情報によると、同社は先日発表した2025年第4四半期決算において、売上高が前年同期比15%増の3,500億ウォン、純利益が22%増の350億ウォンを達成しました。この数字の裏にあるのは、単なる需要回復ではなく、収益構造の質的な変化です。特に注目すべきは、2月2日に公表された米テキサス州における500億ウォン規模の変圧器供給契約です。米国市場は現在、老朽化した電力網の更新と脱炭素化に向けた投資が活発化しており、ここで実績を積み重ねていることは、今後の受注拡大に向けた強力な「名刺」となります。
業界全体の動向を見渡すと、IEA(国際エネルギー機関)の予測通り、グローバルな再生可能エネルギー投資は拡大の一途をたどっています。これに伴い、発電所で作られた電気を各家庭や工場に届けるための「変圧器」や「送電線」の需要が爆発的に伸びています。イルジン電気は、この波を逃さぬよう、2026年に向けて1,000億ウォン規模の設備投資計画を発表しました。特にクリーンエネルギー対応の変圧器生産ライン増設は、ESG投資を重視する機関投資家にとっても魅力的な材料であり、同社が目指す「北米輸出比率40%」という目標の達成を現実的なものにしています。
一方で、投資には常にリスクが伴います。この銘柄を分析する上で見落としてはならないのが、原材料価格と為替の動向です。変圧器や電線の主原料である銅や鋼材の価格が高止まりすれば、利益率を圧迫する可能性があります。また、売上の海外比率が高まるにつれて、ウォン高ドル安の進行は収益の目減りにつながるリスク要因となります。さらに、HD現代エレクトリックなどの大手競合他社とのシェア争いも激化しており、技術的な優位性を維持し続けられるかが今後の鍵となるでしょう。
しかし、現在のアナリストコンセンサスでは、目標株価が55,000ウォンに設定されており、現在の株価水準(約45,000ウォン)からは20%以上の上値余地が見込まれています。バックログ(受注残高)が2兆ウォンを超えているという事実は、少なくとも向こう数年間の収益基盤が盤石であることを示しています。2026年のEPS(1株当たり利益)成長率が25%と予測されている点も、成長株としての魅力を裏付けています。
結論として、イルジン電気は現在、国内中心の事業モデルからグローバルな輸出企業へと脱皮する過渡期にあり、その変革は順調に進んでいると評価できます。テクニカル指標が示す上昇余地と、北米市場での確実な実績作りは、投資家にとって心強い材料です。短期的には原材料コストの変動に注意を払う必要がありますが、電力インフラの近代化という世界的なメガトレンドに乗っている同社は、ポートフォリオに成長性をもたらす有力な候補と言えるでしょう。5月に予定されている第1四半期決算発表と、設備投資の進捗状況を注視しつつ、押し目を狙う戦略が有効であると考えられます。