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日本株2026年2月10日

日本製鋼所:伝統の「鉄」と最先端「光」が交差する産業界の巨人、その変革と現在地

Japan Steel Works, Ltd.5631
日本株

重要な要約

日本製鋼所(5631)は、第3四半期決算で増収増益を達成し、原子力や防衛、産業機械分野での底堅い需要を背景に株価は高値圏で推移しています。中国市場の停滞を他地域の成長でカバーする強靭な収益構造と、4月の組織改編による経営効率化が注目されます。本稿では、テクニカル指標とファンダメンタルズの両面から、同社の「今」と「未来」を詳細に分析します。

北海道室蘭の地で日本の重工業を支え続けてきた日本製鋼所(JSW)。その名前からは、巨大な鋼の塊や重厚長大な産業機械を想像する方が多いでしょう。しかし、今のJSWは単なる「鉄の会社」ではありません。原子力発電所の重要部材から、スマート社会を支えるフォトニクス(光)事業、さらにはプラスチックリサイクル技術まで、時代の要請に応じたポートフォリオの入れ替えを果敢に進めています。2025年2月上旬に発表された第3四半期決算と組織再編のニュースは、同社が次の成長フェーズへと舵を切っていることを如実に示しています。投資家の視線が熱く注がれるこの銘柄について、テクニカルな側面とファンダメンタルズの深層を紐解いていきましょう。

まず、足元の株価動向をテクニカル分析の視点から冷静に評価してみます。投資家の心理状態を表す代表的な指標であるRSI(相対力指数)は、14日ベースで「59.66」を示しています。一般的にRSIは70を超えると買われすぎ、30を下回ると売られすぎと判断されますが、現在の数値はその中間に位置しており、過熱感なき上昇トレンド、あるいは安定した保ち合いの中にあることを示唆しています。これは、決算発表後の市場の反応が、投機的な急騰ではなく、実需に基づいた冷静な買いに支えられていると解釈できるでしょう。

一方で、最近の変動率(ボラティリティ)は6.5%と、大型株にしてはやや高めの水準を記録しています。これは決算発表前後の思惑や、市場全体の地合いの変化に敏感に反応した結果と考えられます。分析スコアが「40」というやや慎重な数値を示している点は見逃せません。これは、株価が52週高値圏にある中で、割安感が薄れていることや、短期的な利益確定売りの圧力が潜在していることを警告している可能性があります。テクニカル面では「順張り」の好機に見えますが、高値掴みを警戒する慎重さも求められる局面と言えるでしょう。

では、株価を支えるファンダメンタルズ、つまり企業の基礎体力はどうなっているのでしょうか。2025年2月9日に発表された2025年3月期第3四半期(4-12月)の連結決算は、売上高が前年同期比16.4%増の2011億円、純利益が同20.7%増の149億円という、極めて堅調な内容でした。通期計画に対する進捗率も、売上高で約69%、営業利益で約71%と、概ね計画線に沿って推移しています。この数字の裏側にある事業環境の変化こそが、投資家が最も注目すべきポイントです。

事業セグメント別に見ると、世界的なエネルギー安全保障の高まりと脱炭素の流れが、同社の「素形材・エネルギー事業」に強力な追い風となっています。特に原子力発電向け部材や高効率火力発電向け製品の需要拡大は顕著です。AIの普及に伴うデータセンターの電力消費増大が叫ばれる中、安定電源としての原子力や火力の見直しが進んでおり、これがJSWの高品質な鋳鍛鋼製品への引き合いを強めています。かつて逆風と言われたエネルギー分野が、今や確固たる収益の柱として復権しているのです。

一方、「産業機械事業」においては、興味深い地域差が生じています。これまで成長エンジンであった中国市場では、景気減速に伴う投資判断の先送りが見られ、プラスチック加工機械などの受注にブレーキがかかっています。しかし、JSWの強みは特定の地域に依存しないグローバル展開にあります。中国での停滞を、インドをはじめとする他地域の堅調な需要や、FPD(フラットパネルディスプレイ)関連機器の底堅いマージンが相殺しており、全体としての収益性は維持されています。特定のリスクをポートフォリオ全体で吸収する経営の強靭さが証明された形です。

さらに、投資家として見逃せないのが、2026年4月1日付で実施される組織改編と人事異動です。子会社である日本製鋼所M&Eの吸収合併に伴い、「素形材エンジニアリング事業部」を新設することや、「フォトニクス室」の設置が発表されました。これは単なる組織いじりではありません。重複する機能を統合してガバナンスを強化すると同時に、次世代の成長ドライバーである窒化ガリウム(GaN)などの結晶材料ビジネス(フォトニクス事業)を、全社的な戦略の中核に据えるという明確な意思表示です。中期経営計画「JGP2028」で掲げる売上高3800億円超の目標に向け、既存事業の筋肉質化と新規事業の加速を同時に進める姿勢は、市場からポジティブに受け止められています。

もちろん、リスクがないわけではありません。前述の通り、中国経済の先行き不透明感は依然として残っており、設備投資需要の回復が遅れれば、来期以降の業績に影を落とす可能性があります。また、テクニカル分析スコアが示すように、現在の株価水準には将来の成長期待が一定程度織り込まれており、決算数値が市場予想に届かなかった場合の反動安リスクも考慮すべきです。

結論として、日本製鋼所は今、「オールドエコノミーの雄」から「先端マテリアルとエネルギーソリューションの企業」へと脱皮する過渡期にあり、その進捗は順調と言えます。RSIが示す適度な過熱感と、決算で見せた実体経済への適応力は、中長期的な視点を持つ投資家にとって安心材料となるでしょう。中国リスクという懸念事項はあるものの、それを補うエネルギー分野の構造的な需要増と、組織再編による効率化効果は魅力的です。単に鉄を作る会社としてではなく、エネルギーとテクノロジーの結節点に位置する戦略的企業として、その動向を注視する価値は十分にあります。

本レポートはInverseOneが分析した資料です。投資判断の最終責任は投資家本人にあります。本レポートは投資アドバイスではなく、参考資料としてのみご利用ください。過去の実績は将来の収益を保証するものではありません。

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