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仮想通貨2026年1月17日

Liskの再起と迷走:新興市場への賭けとガバナンスの壁

LiskLSK
仮想通貨

重要な要約

Lisk(LSK)はBinanceでのペア追加や一時的な価格急騰など話題を集める一方、ガバナンスの停滞という構造的な課題に直面しています。新興市場への進出という明確な戦略と、トークンバーン否決に見る組織的な脆さ。テクニカル指標が示す中立的な現状と合わせ、投資家が今まさに注視すべきLiskの光と影を詳細に分析します。

暗号資産市場において、古参プロジェクトがどのようにして「再発明」を遂げるかというテーマは、常に投資家の関心を集めます。2016年の登場以来、長い歴史を持つLisk(LSK)は今、まさにその分水嶺に立っています。11月中旬に見せた24時間で62%という驚異的な価格急騰、そしてBinanceによるLSK/USDCペアの追加といったニュースは、市場にLiskの存在感を再び強く印象付けました。しかし、表面的な価格変動の裏側には、プロジェクトの方向転換に対する期待と、解決されないガバナンスの課題という二つの相反する要素が渦巻いています。今回は、テクニカルな現状とファンダメンタルズの深層を掘り下げ、この銘柄の真の価値を問い直してみたいと思います。

まず、足元の市場心理を読み解くためにテクニカル指標に目を向けてみましょう。提供されたデータによると、Liskの14日RSI(相対力指数)は「52.65」を示しています。この数値は、極めて興味深い「均衡」を意味しています。一般的にRSIが70を超えれば買われすぎ、30を下回れば売られすぎと判断されますが、50近辺という数値は、強気派と弱気派の力が拮抗している、あるいは市場が次の材料を待って様子見をしている状態を示唆しています。11月の急騰劇を経て、市場の熱狂は一旦落ち着きを取り戻し、適正価格を探るフェーズに入ったと言えるでしょう。

一方で、分析スコアは「40」というやや慎重な数値が出ています。これは強気一辺倒で飛びつくべき局面ではないことを警告しています。最近の変動率が5.54%であることは、デイトレーダーにとっては魅力的なボラティリティ(価格変動の激しさ)を提供していますが、中長期保有を考える投資家にとっては、まだ価格形成が不安定であることを意味します。チャート上では、0.28ドルから0.30ドルの価格帯が重要な支持線(サポートライン)として機能しており、ここを死守できるかが短期的には最大の焦点となります。もしこのラインを割り込めば、2024年の安値を試す展開も否定できません。

しかし、チャートの波形だけを追っていては、Liskの本質的な変化を見落とすことになります。現在、Liskは単なるインフラ提供から、具体的なユースケースの創出へと舵を切っています。その象徴が、新興市場への注力です。1,500万ドル規模の「EMpowerファンド」を立ち上げ、アフリカやラテンアメリカ、アジアのWeb3スタートアップを支援する動きは、非常に理にかなった戦略と言えます。先進国では既に飽和気味のブロックチェーン市場ですが、金融インフラが未発達な新興国では、実需としての技術採用が期待できるからです。これは、かつてCeloがイーサリアム互換へと移行し、新興国での採用をテコに収益を大幅に増加させた成功例を彷彿とさせます。南アフリカのLovCashなどの事例に見られるように、Liskが「投機対象」から「実用インフラ」へと脱皮できれば、その企業価値は根底から覆ることになるでしょう。

ところが、こうした明るい展望に冷や水を浴びせかねないのが、ガバナンス(組織統治)の問題です。投資家として最も警戒すべきは、2025年7月に提案された1億LSKのトークンバーン(焼却)案が否決されたという事実です。この提案は、投票者の99.46%という圧倒的な賛成を得ながらも、投票率が規定に達しなかったために不成立となりました。これは「サイレントマジョリティの無関心」が、プロジェクトの重要な意思決定を阻害していることを露呈しています。供給量の25%に相当するトークンを消滅させることは、希少価値を高め、価格上昇圧力となる強力な施策でした。それが実行できなかったことで、市場には供給過剰への懸念がくすぶり続けています。

実際、2024年のレイヤー2移行以降、流通供給量は12%増加しており、明確なデフレ圧力(バーンなど)が働かなければ、保有資産の価値はインフレによって希薄化するリスクにさらされます。Lisk DAOは2026年第1四半期に投票システムの改革を予定していますが、裏を返せば、それまでは抜本的な供給量調整が難しい状態が続くということです。投資家にとって、この「決定の遅さ」は機会損失につながりかねません。

また、オンチェーンデータに目を向けると、日次アクティブアドレス数が1万人未満で推移している点も懸念材料です。240万ドル相当の報酬プログラムを展開しているにもかかわらず、ネットワーク活動が爆発的に増えていない現状は、エコシステムの拡大がまだ道半ばであることを示しています。Gearbox ProtocolやOrochi NetworkといったDeFiプロジェクトとの連携は進んでいますが、それらが実際にユーザーを呼び込み、トランザクション(取引)手数料を生み出すまでには、6ヶ月から18ヶ月という長いリードタイムが必要となるでしょう。

結論として、現在のLiskは「期待」と「現実」の狭間で揺れ動いています。テクニカル面でのRSI 52.65という数値は、市場が次の方向性を決めかねている迷いを正確に反映しています。新興市場への進出という長期的なストーリーは魅力的ですが、足元のガバナンス不全とユーザー数の伸び悩みは無視できないリスク要因です。

投資家としてのスタンスは、時間軸によって大きく異なります。短期的なトレーダーであれば、5%を超える変動率と明確なサポートラインを利用したレンジ取引に妙味があるでしょう。しかし、中長期的な視点で投資を検討する場合、今の価格水準が割安かどうかを判断するには、「EMpowerファンドによる具体的な成功事例の出現」か、あるいは「ガバナンス改革によるトークン焼却の確実な実行」という、もう一つの確証を待ちたいところです。Liskが古豪としての意地を見せ、新興市場の覇者となるか、それとも意思決定の遅さに足を取られるか。その答えが出るのは、もう少し先になりそうです。

本レポートはInverseOneが分析した資料です。投資判断の最終責任は投資家本人にあります。本レポートは投資アドバイスではなく、参考資料としてのみご利用ください。過去の実績は将来の収益を保証するものではありません。